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地方都市の多くは完全なる車社会で、幹線道路沿いには、巨大ショッピングモールを筆頭に、娯楽施設、ホームセンター、家電量販店、飲食店・・・、様々な建物が建ち並び、行き交う車にアピールすべく大きな看板を掲げています。その光景はさながらバナーがひしめくインターネット画面のようで、人はいるけど人気がない。ロードサイドを中心とした都市空間の”二次元化”が起こっています。

三重県鈴鹿市。関東に本拠を置く印刷会社の、中部・関西方面のフラッグシップの計画です。長距離運搬の中継地点となる倉庫を含む事務所と、ここで働く所員のための住宅(社宅)、そして出張員が寝泊まりするための、いわゆるゲストルームが主なプログラムです。地域に根ざすという理念と、居住空間の快適性の追求という観点から、1階に事務所を平面的に配し、2階に住居系を載せる構成としました。

地方都市のロードサイドに居住するという課題を如何に解くか。車社会のスピード感の中で見えにくくなってはいますが、実際には立体空間は存在しています。そこに価値を見出し、ロードサイドの5m上空に、快適な居住のための園を作ろうと考えました。図式的には『看板に住む』わけです。

事務所の屋根の上には小屋(住戸)が建ち並びます。各棟は周囲の看板と同じようなスケールです。前面道路に対して窓を設けず、ぶっきらぼうな表情を見せていますが、その代わりに反対面(東面)に大きな窓を並べ、居住空間に朝日を取り込んでいます。また小屋群はそれぞれ異なる反射特性を持つ金属板を身にまとっています。情報をインプットし、紙等の媒体を通じてアウトプットするという、印刷業そのものを表していますが、うつろう空や近隣環境を映し出し、また、ここで営まれる生活の”生”さを、編集しつつ増幅させて発信します。

この空中庭園は小さな”街”です。その街が今、無表情な看板によって地域に認知されつつあります。やがて地域に開放され、人が行き交うようになるでしょう。その時、その賑わいがまた新たな”看板”となります。他とのアピール合戦に参戦するのではなく、ゆっくりと時間をかけて地域のコミュニティに溶け込み、さらにはその発信地となる事を願っています。

 

DATA
所在地:三重県鈴鹿市
主要用途:事務所、寄宿舎
規模
階数:地上2階
敷地面積:903.87㎡
建築面積:353.50㎡(建蔽率 39.11%)
法床面積:413.95㎡(容積率 45.80%)
延床面積:442.11㎡
構造・構法:鉄骨造

設計監理:タスエス
内装設計:ニトロデザイン
構造:ユナイテッドデザイナーズ
施工:大野工務店
撮影:平井広行

category: WORKS