RICO

福島県郡山市。小山や小川に囲まれ、周辺には田んぼが広がる、のどかな分譲地の一画に建つ住宅です。 丘を削って出来た分譲地であり、その裾野にある敷地は、立って360度ぐるりと見回すと、牧歌的な風景が遠くに見えたり、街路樹が借景になったり、隣家の擁壁が光に照らされていたり… 遠近多様な景色が見つかります。

その景色、環境を取り込んで、というより、その中に包まれるように暮らせればと思い、歪な形の敷地の軸に頼らず、角度を振って建物を配置する事を決め、程よく囲われた場所=”広間”を作り出すよう木箱をいくつか据えました。木箱の中はそれぞれ、お風呂だったり台所だったりと用途がはっきりしており、そのための仕上げもきちんと施されています。

一方、木箱の外側、広間側は柱や梁、間柱が剥き出しです。仕上げられていない、ハリボテ状態。現しになった躯体を拠り所に、住み手が、その時の気分や趣味思考に合わせて、棚を付けたり、飾ったり、少しずつ成長させて行ければ良いなと考えました。半分外みたいな場所なので、環境も色々変化するでしょうから、それに呼応するように。

もうひとつ。彼らは東日本大震災で家を失いました。RC造の建物の、壁紙の壁の裏に隠れていたコンクリートの躯体が、いとも簡単に壊れ、姿を現したそうです。そんな彼らにとって、構造体が身近にあり、常日ごろ目にし、触り、利用する事は、非常に重要なのではないかと考えました。

屋根裏部屋を内包した大屋根が、木箱にそっと載っただけの広間は、光と風が通り抜け、そこでの生活は、自然、地球とともに暮らすことをあらためて感じさせてくれます。そんな中で、大好きな漫画をこれでもかというほど並べ、囲まれ、読みふける。そんな平穏な時間を取り戻せる事こそ、大げさですが、ほんの小さな、復興の原点になるとも感じます。

 

DATA
所在地:福島県郡山市
主要用途:専用住宅
家族構成:夫婦+子供1人
規模
階数:地上2階
敷地面積:281.87㎡
建築面積:82.81㎡(建蔽率 29.38%)
延床面積:124.21㎡(容積率 44.07%)
構造・構法:木造

設計監理:タスエス
構造設計:安藤耕作構造計画事務所
施工:光建設
撮影:平井広行

category: WORKS